年金改革法の成立で、年金受給の繰上げ・繰下げはどう変わるのか?

年金

2020年5月29日に国会で年金改革法「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律 」が成立しました。

この年金改革法で年金の何が変わるのかを説明します。

年金の繰上げ受給とは?

老齢基礎年金は、原則として65歳から受け取りますが、手続きをすれば60歳から65歳になるまでの間で繰上げて受けることができます。
また老齢厚生年金は、昭和28年(女性は昭和33年)4月2日以降に生まれた方は、生年月日に応じて受給開始年齢が異なりましが、60歳から受給開始年齢の前月までに請求することにより、「繰上げ受給の老齢厚生年金」を受け取ることができます。

ただし年金の繰り上げ受給を行うと、繰上げ受給の請求をした時点に応じて年金が減額され、その減額率はずーっと変わらないことに注意が必要です。

■年金の全部繰上げと一部繰上げ

年金の繰上げの方法には全部繰上げと一部繰上げがあり、どちらかを選ぶことができます。
また、繰上げ支給の老齢基礎年金を受けても特別支給の老齢厚生年金は支給されます。

年金の繰下げ受給とは?

老齢基礎年金・老齢厚生年金は、65歳になった時点で請求できますが、あえてその時点では請求をせずに66歳以降70歳までの間に繰り下げることができます。

繰下げ受給の場合、70歳まで繰り下げると、最大で42%年金額が増額されます。
繰下げには、老齢基礎年金の繰下げと老齢厚生年金の繰下げがあります。

■老齢基礎年金の繰下げ受給額

老齢基礎年金の繰下げ受給を選択した方は、繰下げを申し出た日の年齢に応じてではなく、月単位で年金額の増額が行われます。
そしてその増額率は、一生変わりません。

増額率の計算式は下記になります。
増額率=(65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数)×0.007

■老齢厚生年金の繰下げ受給額

老齢厚生年金の繰下げ加算額については、原則、65歳時点の老齢厚生年金額を基準として、支給の繰下げの申出をした時期に応じて、計算されます。

老齢厚生年金の繰下げ加算額の計算式は下記になります。
繰下げ加算額=(繰下げ対象額+経過的加算額)×増額率

増額率については、請求時の年齢によって変わります。

今回の年金改革法で繰上げ受給・繰下げ受給はどう変わる?

■繰上げ受給の減額率が変更される

繰り上げ受給を行った場合の減額率は、現在は1ヶ月あたり0.5%ですので5年(60ヶ月)繰上げると最大30%の減額となります。
これが2022年4月からは1ヶ月あたり0.4%になりますので、5年で最大24%の減額になります。
つまり減額率が縮小されますので、繰り上げ受給が行いやすくなります。

■繰下げ受給の対象年齢拡大および加算額が増加される

現行では、繰下げ受給を申請できるのは「70歳まで」となっていますが、これが2022年4月1日より「75歳まで」に拡大される予定です。

また、加算額の算定に用いる増加率についてもその分増えることとなり、もし75歳まで10年間繰下げた場合、その増加率は現行で70歳まで5年間繰下げた場合の42%に比べ、84%と倍増します。

年金改革法のまとめ

今回の年金改革法は、人生100年時代を見据えた改革です。
したがって、今後は今まで以上に自分がいつまで働けるのかを良く考えて、年金の繰上げ、繰下げを行う必要があります。

iDeCoやお勤め先で用意されている確定拠出年金なども含めて、老後の生活費用を準備しておくことが大切です。

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